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山善の食器乾燥機を改造して理想のドライブースを自作するよ

最近プラスチックよりも木材を切断する事のが多いゆーいち(@ucu1k2)です、こんにちは。

今回は『模型用乾燥機としては有能な山善(YAMAZEN)の食器乾燥機』の問題点を解消して、使い勝手の良いドライ(乾燥)ブースを製作しました。

自作に当たっては以下のサイトを参考にしています。というかほぼそのままです。先駆者に敬礼。

参考 ガンプラ塗装に役立つ!山善の食器乾燥機を使って自作の「ドライブース」を製作してみた。YZPハウス

山善の食器乾燥機を模型使用した時の問題点

モデラー御用達とも言われる山善の食器乾燥機が優れている点は

・自然対流式のため熱風が出ず、自然な温度で乾燥を促せる。
・食器乾燥機のため大容量でホコリなどが入りにくい構造。

特に自然対流式というのがある意味災いして食器の乾燥にはパワー不足だが模型にとってはちょうどいいというスペックとなり、本来の用途とは違う目的でYD-180(LH)は評判となりますが残念ながら生産終了。
のちにYDA-500Wという後継機種が出ました。スペックに変化はないようです。

このYD-180は「食器を並べるためのピンをニッパーで全て切り飛ばし、塗装ベースを並べられるように改造する」というのが定番作業でしたが、しばらく使っていると次の3つの問題にぶつかります。

・ホビーベースの塗装ベースを2つ並べるのがきつい
・上蓋の開閉が不十分でベースが入れづらい

・高さが足りないので大物パーツが入れられない

山善乾燥機は外径こそペインティング(塗装)ベースを2つ並べられるサイズですが内径はカーブを描いているために有効設置サイズが狭くなっています。

そのためベースを二枚並べるためにはミッチリと押し込まなければならず、開口が狭いのもあって入れづらいのが課題でした。

また、高さも足りません。大物のパーツになると蓋に接触することも何度かありました。
持ち手を短くする、蓋部分の受けを切り取るって蓋が取り外し出来るようにする、などで多少は改善されましたが押し込まないと入らないのには違いありません。

硬質プラなので蓋の開閉部分を切り取るのは結構大変です。私はノコギリで切り落としました。

サイズを決めて製作開始

欠点も見えた所で早速製作開始です。

今回の作業は電気工作等を含み火災や事故の危険性がありますので、作業に当たっては自己責任でお願いします。

塗装ベースのサイズは(W)175×(D)280mm、二つ並べると350×280mmになります。
なので余裕を見て内径寸法は(W)400×(D)300×(H)500mmにしました。


簡易CADソフトで簡単に図を描いてみます。普通に紙に書いても全然OKです。
ただし、箱を組む時には「板の厚さ(今回の場合は5.5mm)」があるのを忘れないようにしてください。
そして最終的に1mm程度の誤差はカンナ等で削って調整するか、「木材同士の貼り合わせの時に吸収する」と覚えておいてください。

よくあるカラーボックスが大体この40×30cmなのですが、実は山善の食器乾燥機は外形寸法が41×40.5cmなので占有面積としては結構小さくなります。

ちなみに完成形がこれです。
底に食器乾燥機から外した加熱部品が入っているため、前面は底から10cm残して扉で開閉式になっています。
並べるのも簡単で高さも十分に確保しています。

ホームセンターでMDFを調達

アーティステーションの記事でも紹介しましたが、MDFという比較的安価で軽く、反りや曲げが少なく加工に向いている木材があります。DIYしている人にはおなじみの木材です。
今回は先のサイトに倣って、厚さ5.5mmのMDFを加工して箱を作っていきます。
MDFはどこのホムセンにでもある訳ではないので事前にネット等で確認しておいてください。とりあえず島忠ホームズにはあるようです。

ホームセンターで販売している木材はMDFに限らず、だいたい30cm×91cmとか45cm×60cmとかそういう平板の単位で販売されています。
そしてほとんどのホムセンでは巨大な切断マシーンを使って1カット20~50円程度で指定した通りに木材をカットしてくれるサービスがあります。個人で切るより遥かに楽で綺麗に仕上がりますのでぜひ利用してください。

ですので、箱図を描いてサイズを選定したら必要なパーツのサイズと枚数を抜き出したら、ホームセンターで販売されている板のサイズに合わせて切り出すためのパーツを並べた図を作ります。

こういった図を「板取り図」と言います(上図は参考例です)。
私の場合は今回450×600×5.5mmと600×910×5.5mmの板から今回使用するパーツを切り出しました。
板の価格がそれぞれ450円と650円ぐらいでカット料が300円ほどですので、1400円ほどになります。

板取りはパズルのようで無駄のない配置になかなか悩むのですが、注意する点が3つあります。

■板取り図は事前に作成する(現地で作らない)

■カットを途中で止めることはできない
■切断の際にノコギリの刃の厚み分削られる

板取りは、他にも最善配置があるのでは、と延々悩んでしまいがちです。
店員さんにも他のお客さんにも迷惑なので事前に作ります。

そしてホムセンのカットサービスでは、一度切り始めたら切断するまで切るのがルールです。途中で止めてL字やT字のようには切れません。ですのでそれを意識して並べる必要があります。

また、例えば600mmの板をカットして200mmの板が3本取れるかと言うと取れません
なぜならカットした刃の部分は木屑になって飛び散り消失するからです。
これは大体1カットにつき3mmぐらい無くなると考えてよいです。
要するにピッタリとかギリギリで板取りすると微妙にサイズが足りなくなる、という事になります。

余った木材ですが後で余りの木材から小片を切り出して使うので、ライトユーザー向けのノコギリがあるといいかもしれません。板目のないMDFなのでノコギリの刃は縦引きでも横引きでもどちらでもいいですが個人で少し使う程度なら刃の細かい横引きにしておく方がいいでしょう、切断面も綺麗だし。

ホームセンターで買っておくべきものは他にもありますが最後にまとめて紹介します。

食器乾燥機を分解する

まずは山善の食器乾燥機を分解し、コードを断線しないように放熱板を取り出します。
放熱板の本体部分はプラスドライバーがあれば台座から取れます。

分解の際は、タイマー部分と電源コードの部分の処理が必要になります。

タイマー部分の処理

タイマーの仕組みですが、動作中は下の写真の太い黒コード2本が電気回路的につながっており、「切」になると切断されます。

できればこのタイマーを流用したかったのですがどうしても本体から外れないので流用は諦めました。

この端子部分で切断し、外した方の電線をワイヤストリッパーなどで剥いて電線を繋げます。
必要に応じて熱収縮チューブや絶縁テープ(ビニールテープ)での保護を行ってください。
この2本を繋げることで電気回路的には「常時作動(ON)」の状態になります。

電線剥き出しのままは絶対にNGです
火災保険が本当に支払われるか試したい人だけそのままにしておいてください。

電源コードの取り外し

コンセントプラグが邪魔して電源ケーブルが抜けないので底面をバキバキに開口して、プラグを抜き出せる穴を作ります。ノコで切り込みを入れてラジオペンチでめくり折りながら進めていくと楽かもしれません。
これでようやく放熱板が外せるようになります。

電線部分の工作を行っているのでこの段階で動作テストを行っておいてください。

放熱板を底板に固定する

底板にボルトを通して放熱板を固定していきます。
放熱板の固定はもともと製品で固定されていた穴をそのまま使います。


固定する方法は色々あるかと思いますが、今回は下図の方法を取りました。

底板にM4ボルトを通す穴を開け、ホームセンターで切断した余りの端材からボルト受け用のパーツを切り出し、穴の大きさの違いを利用して固定します。4mm穴を開けた受け用パーツは底板に接着剤で貼りつけます。

他の作業と並行して端材を妻に切断してもらっています。

開孔する部分は中心線を引いた底板に放熱板を乗せて現物合わせでマーキングします。

同様に放熱板をナットで固定します。

落下防止用材を固定する

ニクロム線が張ってある放熱板にプラモパーツが落ちたら即死ですので、即死回避用の板を張ります。

素材やサイズなど色々試してみて最終的にパンチングのアルミ板(225×300mm 厚さ0.5)にしました。

パンチングの開口が3Φなのでドリルで4mm穴に変えておきます。
ちなみに4mmとM4と4Φはリットルとキログラムみたいな用法の違いなだけで合わせるべきサイズは全部同じです。

ケーブル類は邪魔にならないようにまとめて留めておきます。

これで底板は完成です。この底板をベースにして外装を貼り合わせて組み立てていきます。

外装の組み立て

これは設計図通りに接着剤で貼り合わせていくだけです。
(上の写真では試行錯誤中のため、パンチングメタルではなく大きなサイズのアルミ板になっています)

使用した接着剤は「セメダイン 超多用途接着剤スーパーXゴールドクリア」です。
ガラスでもアクリルでも耐熱性、耐水性、粘り気があって粘着力が高いので耐衝撃性にも優れる、これは一家に一本レベルでめちゃくちゃ使える接着剤でお勧めです。
チューブの口が固まりやすいので少ない容量のものを買って試すと良いかと。

盛らずはみ出さず同梱のヘラを使って板の両方に薄く塗り伸ばし、半乾き状態になるまで少し待ってから貼り合わせたら養生テープで固定して乾燥まで放置します。
固まるまでにいい感じの猶予があるので位置合わせも余裕です。
ぶっちゃけ10分ぐらいで固着しますが全ての作業を終えてから一晩放置しておけばいいと思います。

で、実際に組み立てていくと扉が1~2mm程度大きくて閉まりません。
なのでカンナで削って調整します。#60番手ぐらいの固いスポンジヤスリで地道に削ってもいいですが、まぁカンナの方が楽です。

気持ちよく収まりました。

また、裏板には電源ケーブルを出すために30Φの穴を開けます。
開孔には電動ドリルに「ホールソー」と呼ばれる刃のついたアタッチメントをつけて穴を開けます。
先行してドリルを突き刺し、それを起点にホールソー部分で開孔します。

使用しているのは昔から使っている「ブラックアンドデッカー」の電動ドリルドライバーですが、廃版になってもまだ活躍してくれています。

綺麗に開口出来ました。
開孔部分がささくれ立っていますが後で「グロメット」という保護用のゴムパーツをハメる場合はこのままでいいです。
ハメないならヤスリ掛けして縁を丸くしておいてください。

扉の取り付け前まで組みあがったらカンナで板の縁の角を削る「面取り」を行ってます。ガンプラとは逆に「C面」をつける作業になりますね。
見た目も手触りも良くなるので面取り作業は好きです。

扉に蝶番を付ける

板厚が5.5mmと薄い板なので通常の蝶番の付け方はできません。

当て木を付けようかスライド蝶番にしようか色々考えましたが最終的には上の写真のようにしました。
最初から開いた状態で付けて3mmビスで固定。この板厚では通常蝶番を付けるときに行う「掘り込み取付け」もできないので素付けしています。
蝶番の厚み分、隙間が空きますが許容範囲としました。妥協も大事です。

細かい部分の細工を行う

塗装ベースを置けるように、端材から切り出した長さ100mm程度の細い棒を4本接着剤で貼りつけ、そこに幅400mmの橋を2本、左右に渡します。

また、MDFでは外見が殺風景だったのでホムセンに売っていた化粧(リメイク)シートでデコレーションし、扉に取っ手を付けます。裏からナット留めです。

裏板から電源ケーブルを出す部分にグロメットをはめ込みます。
グロメット(ゴムブッシング)と言われてもパッとはわからないかもしれないですがケーブルを保護するための細工です。多分何かしら見たことがあるかと思います。

中央のゴム膜にカッターで切り込みを入れてコンセントプラグを通し、グロメット本体は裏板にねじ込みます。

タイマーはRevexの「1回だけ入・切」タイマーを使用しました。コンセントプラグを接続して完成です。同機能のデジタルタイマーでもよかったんですがいちいちボタン操作するのも面倒かと思いアナログダイヤルにしました。

動作テスト

簡易温湿度計を天板に取り付け、室温20℃の2時間連続運転で48℃、湿度17.7%を計測しました。山善乾燥機(ノーマル)の運転温度が大体40℃前後、湿度30%ぐらいなので少し高めですが、ポリスチレン(PS)樹脂の耐熱温度が70~90℃なので問題ないでしょう。ポリパテはちょっと考える温度ですね。

もう少し低い温度で運用したい場合は、アルミ板をパンチングではなく普通の平板を使うと38℃ぐらいまで落ちるのですが、下に熱がこもりすぎるのも危険かなと思いパンチングにしています。
アルミよりも熱伝導率の低いステンレスなども使えばある程度温度のコントロールが出来そうです。

今回使用した物

以下、箇条書きにしていきます(■マークがついているものはAmazonで購入、価格はアバウトです)

山善の食器乾燥機(YD-180 or YDA-500W)
MDFボード+カットサービス料 1400円
M4 六角ボルト70mm 2本(放熱板固定用) 400円
M4ナット(放熱板固定用) 100円
M4スプリングワッシャー/平ワッシャー(放熱板固定用) 200円
セメダイン 超多用途接着剤スーパーXゴールドクリア 500円
パンチングアルミ板 650円
平蝶番+3mmさらネジ 400円
扉用取っ手+取っ手用M4ボルト20mm 400円
木目調カッティング(リメイク)シート(40cm×2m) 2000円
■Revex社製ON/OFFタイマー 1000円
■グロメット 800円(5個入り)

山善の食器乾燥機を除き、合計で7850円でした。
更に機能的に必ずしも必要ではないカッティングとシートタイマーとグロメットを除くと4000円なのでこんなもんでしょうか。
山善の食乾機が6000円弱なので一から揃えると、クレオスのドライブースほどの価格がかかる計算になりますが、すでに所持している人は使い勝手が雲泥の差なので是非とも挑戦してほしい工作です。

次に使用した工具、小物類です。

電動ドリルドライバー
+木材用/金属用M4ドリル
+木材用M6ドリル
+30Φホールソー
養生テープ
横引き用ノコギリ(端材切り出し用)
カンナ・スポンジヤスリ
ラジオペンチ(食器乾燥機破壊/ナット締め用)
ニッパー・ハンディーソー(食器乾燥機破壊用)
熱収縮テープ・ビニールテープ

電動ドリルドライバーは効率を考えるとほぼ必須レベルで必要ですが、こういったDIY工具はなかなかお高いです。

M4、M6サイズの穴開けであれば電ドラよりも安い専用工具で人力でやれます。
ただ電源コードを逃がすための30Φの穴あけがきついので他の方法でコードを逃がす方法を考えてください。

カンナはサイズ調整用にあった方が絶対楽です。大体1000円ぐらいの一枚刃でいいかと思います。
ただものすごく細かい木片が出るのでカンナ掛けは極力屋外で行った方がよいです。

ニッパーは普段使っている模型用のは決して使わないでください。硬質プラをこじるようにぶった切るので潰れてもいいものを使ってください。

おわりに

今までぎゅうぎゅうと押し込んでいたのが今ではエレガントに並べられるようになり、かなり満足度の高い工作になりました。

素の食器乾燥機に満足していない人は是非試してみてください。ストレスフリーですよ。