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読むと艦艇を作りたくなる模型入門漫画「プニプニとサラサラ」

好きな接着剤はクレオスの流し込みタイプ(無色)、ゆーいち(@ucu1k2)です。

初歩の初歩からプラモデルの作り方をレクチャーしていきながらラッキースケベもこなす漫画「プニプニとサラサラ ―あるいは模型部屋の少年と少女における表面張力と毛細管現象―」が完結しました。
作者は、「ドイツ系三世の少年が魔女っ子ヒロインに変身して悪の錬金術師と戦う”男の娘”漫画『ブロッケンブラッド』」で有名な塩野干支郎次(しおの えとろうじ)先生(@EtoroujiShiono)

プニプニとサラサラ(2)表紙

あらすじ

  • 亡くなった祖母の模型店を相続した主人公、匠海はまったく模型に興味がない高校生。
    その模型店の常連客である高校生グラビアアイドル、文夏はそんな匠海に模型ノウハウの手ほどきを行っていく。

ゲームなどによる艦船ブームの後押しがあるにしても艦船模型というジャンルはニッチだったのか、「俺たちの(恋と)模型道はこれからだ」気味に全三巻で連載終了してしまいましたが非常に丁寧に模型作成の仕方が描かれている漫画です。
最初はニッパーの使い方でクエスチョンマークを浮かべていた匠海も、ヤスリ掛け→小さいパーツの切り出し方→接着剤の使い分け→艦船の筆塗り→合わせ目消し…と順調にレベルアップしていきます。
他のキャラによる撮影のコツなども挟みながらドライブラシやエアブラシ塗装、甲板マスキング地獄も経験しました。
これからも文夏と多くのキットを作っていくのでしょう。

どんなジャンル内でもメジャーとマイナーがある

媒体特有のとっつきやすさから(入門)ノウハウ的漫画が刊行されるのはどのジャンルでも変わりません。
今はいわゆるレクチャー的な漫画よりも、主人公とその周囲を巻き込んだ中でその趣味が展開されていくという日常的な物語の体裁をとっている作品が主流です。
平たく言うと「おっさんの趣味を女子高生にやらせる」漫画です。

例えば最近では
・「ヤマノススメ(登山モノ)」
・「ゆるキャン△(キャンプモノ)」が人気になりましたね。
「サバゲっぱなし(サバゲー)などアウトドアものが多い印象も受けますが
・「87CLOCKERS(PCのオーバークロック)」
・「ハルロック(電子工作)」のようなインドア系趣味漫画など、大抵の趣味にはそれを題材とした漫画が出ているのではないでしょうか。

「キャプテン翼」のようにそれ自体がブームを作り出してしまったものもありますが、「少年ジャンプ」的なバトル系スポーツ漫画と違い、インドア系趣味漫画ってどこまで描くか難しいんですよね。

個人の感想ですが趣味漫画を読む人って雑誌連載時に読む人もいるとは思いますがある程度そのジャンルを知ってる人の方が多いと思います(アニメ化だと逆)。
だから「いや、それは知ってるよ」みたいな事になりがちなばかりか、逆に途中から技術が急に高度になりすぎてついていけないこともしばしば。

この作品、そうした技術のインフレはほぼ見られません。
しかし、タイトルにも引っ掛けてある「プニプニ(通常接着剤)とサラサラ(流し込みタイプ)」の違いというのは、少し模型をかじった人ならわかっているかと思いますが、「じゃあ艦船作れる?」と言われると尻込む人も多いかと思います。
何故尻込むのかと言うと作ったことがないから自信がない。
接着して組み立てるぐらいは当然できるだろうけども艦船模型特有の作り方のコツとか塗り方はわからない。
わからない理由は作ったことがないから、という循環はまるで「そのモンスターを楽に倒すための武器素材はそのモンスターから手に入る」というモンハンのよう。

先ほどの漫画の例で例えればアメフトや薙刀、カバディなどのマイナースポーツ漫画は、マイナーであるがゆえの競技特有ルールを活用して面白さを生み出していく場合がほとんどです。
この作品の場合も、艦船模型というマイナーさを逆手にとってうまく興味を惹き「なるほど艦船はこう作れば(塗れば)いいのか」というのが理解できるようになっています。これが例えばガンプラの場合ですと模型界における野球やサッカーみたいなメジャージャンルですから、おそらく基礎工作以外の部分で面白さを出していかないといけなくなるのではないでしょう。
もちろん艦船模型だけではなく細かい部分の塗り方やエナメル塗料の使い方など、他のモデルにも転用できる知識が盛りだくさんです。

スケールモデルはなぜブームにならないのか

少し余談ですが、艦船だけではなく戦車や飛行機、自動車なども含めたいわゆる「スケールモデル」は日本では70年代にブーム、80年代の鎮静化を経て、90年代には「冬の時代」に突入していました。
しかしそんな中でも00年代頃からキットの見直しによる細密化が進み、2012年からのアニメ「ガールズ&パンツァー(ガルパン)」ブームで戦車模型が脚光を浴び、続いてゲーム「艦隊これくしょん」や「アズールレーン」、漫画「蒼き鋼のアルペジオ」などの影響で艦船模型に興味を持つ人も増えたようです。

戦闘機模型
古くは漫画「エリア88」、近年ではゲーム「エースコンバット」や映画「永遠の0」、アオシマ社のアイドルマスター/マクロスコラボによる「痛戦闘機」などでプチブームは起こるものの苦戦が続いている模様。
ファインモールド社の公式ツイッターによると「(同社で)売り上げが一番いいのはずっと変わらず、紅の豚コラボの『サボイアS.21試作戦闘飛行艇』(2015年3月21日のツイート)」だそうです。

ガルパンブームの時は業界が若干様子を見たのかAFV(戦車)モデル販促の出足は鈍かったですが、艦これモデル化の際にはアオシマ社が、もともと一緒にウォーターラインシリーズを展開していたタミヤとハセガワに協力を要請して素早くコラボキットを展開したのが白眉でした。

元々キット化されていた製品のリパッケージとはいえ、ガンダムのように放映前からどのキットがリリースされるか全て決まっているものと違って、2013年4月に「艦これ」リリース、7月頃のゲーム人気爆発を見越して10月にはコラボキット「長門」を始めとしたグッズをリリースしてますからね。

今でこそフィギュアなど幅広く展開していますが、当初他のグッズ展開が少なくユーザーの飢餓感にヒットした形になりました。

ブームとは多数の人が認知し、共有感を経て人気が形成される事を指しますが、スケールモデル単体ではこの「認知」「共有感力」、もっとわかりやすくいうと「身近な物語」というものを訴求する力が欠けています
そりゃあ戦車も戦闘機もなんとなくはわかりますが、単語を知識として知ってるだけで「物語を知る機会」には乏しいわけです。
例えば大戦時のルーデル閣下の爆撃スコアは凄まじいですがそれで彼の愛機スツーカの模型が売れるかというと、ほとんどの人はその物語を知る機会がない、または物語としてイメージできない(興味がない)訳です。

それをシナプスでつないで補完したのがガルバンであり艦これであり、ゲーム(または登場する女の子キャラ)を介する事で実機そのものに物語が生まれたわけです。
「ガルパンで主人公が乗ったのはドイツのIV型戦車D型」となると、アニメであったり仮想であってもそれが現実感のある物語となります。艦娘だともうそのままですね。

これからも兵器のプラモは物語を生み出しやすい女の子のキャラ性と絡めて楽しむのが主流になっていくのでしょう。
まぁ女体化なら歴史上の偉人でも売れるんですが。

スケールモデルに求められる考証
後は本物と同じに作らなきゃいけない風潮というのがめんどくさいですかね。
ガンダムなんかは機体そのものが良くも悪くも謎のデザイン論なので、ガンプラは自由と言い出す前から存在自体が自由だったりします。

おっぱいは大きければいいというものではないんだね

プラモ界における女の子のレクチャー漫画といえばタミヤのプラモデルの説明書や小冊子としてついてくるモ子ちゃんの講座が有名です。
ちなみにモ子ちゃん、1981年に模型店で配布されたチラシが初出。今年38歳、後厄も終わってますね。

参考 「プラモのモ子ちゃん」君は模型(プラモ)界最強のアイドルを知っているか?Black徒然草 (a black leaf) モ子ちゃんの頃と比べると塗料や工具も格段に充実して、自分で特別な工夫をしなくても通り一遍の物が作れるようになったというのも大きいかもしれません。
昔は「発砲ウレタンの塊ブロックからガンダムの頭部を削り出す」というモデラーの9割9分ができない匠の技を要求されましたからね、小学生向け雑誌で

さて上記リンクの記事を読むとモ子ちゃんのスパルタ具合が理解できますが、この作品のヒロイン、文夏ちゃんはモ子ちゃんのようにドSではありません。
むしろバブみの塊のような激甘講師です。
単に「ヤスリをかけよう」だけではなく具体的にどうすればいいかがコマを割いてしっかり描かれているため、初心者に寄り添うhowto漫画としては満点です。
そのため作品の空気感はあっさりとしており、同作者の他作品のような刺激を求めるタイプの漫画ではありません。
それだけに早い段階での完結は残念ですが、基本的な事は大体描かれています。
その中で牛乳パックで代用する筆用パレットや落下防止用マスキングテープの使い方など作者の実体験からくるようなシーンがちょこちょこと入ってくるのが面白い。
煮詰まってくると適度にライトにエッチなシーンが入ってくるのも現代的なハウトゥ漫画と言えるかもしれません。ヒロインの他に彼女のグラビア仲間など何人か女性が登場しますが、最初は主人公を嫌っていたのに後で好きになってしまう、なんていうドロドロとした影や波乱は全くなく、最後まで微笑ましく見守る形で読み切ることができるのも特徴でしょう。もう少しだけ二人の物語を読んでみたかったですね。
この漫画を読んでから改めて他のハウトゥ本を読むと理解度が早くなるのではないでしょうか。
最初に出てきた「一等/二等輸送艦キット」に「ニッパーと接着剤」で大体2000円ちょっと。もう少しキチンとしたいなと思えばあと2000円追加して「ヤスリとタミヤアクリル塗料4色に筆」を揃えて「プニプニとサラサラ」片手に休日に作ってみるのもお勧めです。

「NOMOKEN」は広い分野に渡ってテクニックが紹介されているので、「自分も試してみたい」と思わせてくれるテクニックがきっとある!
パチ組みを卒業したいアナタにお勧めです。