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シバ・ツカサを名も無き外道に堕としたモノとは

ガンダムビルドダイバーズ前半でリクたちに立ちはだかったシバ・ツカサ。
彼の目的はGBN世界(彼曰く「偽りのエデン」)の破壊。

その行動理念は「GPD(ガンプラデュエル)のガンプラバトルこそが本物のバトルである事を認めさせる」というものでした。

データだけでダメージのやり取りを行うGBNの世界は、実際にキットが破損するというヒリつく世界で500戦以上戦ってきた彼にはヌルい世界に映っていたのでしょう。


GPDの怨念が形になったかのようなシバさんの地道な営業努力による不正ツール「ブレイクデカール」の拡散により「マスダイバー(升=チート)」が増加。
デカールの性能強化によって崩壊の影響はGBNの根幹プログラムにまで及びますが、リクとサラが放った奇跡の力によって世界の崩壊は免れました。

彼は自分の土俵であるGPDでのタイマンバトルでも破れ、自分が「時代に取り残された者」だと改めて悟り、それでも捨てきれない自分の「好き」に悔し涙を流し去っていくのです。

一言でざっくり片づけてしまうと格闘ゲームやネットゲームにありがちな懐古厨もしくは(行き過ぎてしまった)ガチ勢なのですが、初心者クエストとしてお花摘みクエストなんてものがあるGBN世界は「所詮チャットツールにバトル機能が付いたもの」に至る思考もわからないではない部分があります。

MMOネットゲームが普遍的に抱える2つの問題

GBNはネットゲームであり、その仕組みはMMOというよりもゾーンインターフェイス型のMOが近いでしょう(ただし通りがいいためこの記事内ではMMOで統一します)

放送を見る限りでは割とほのぼのとした世界観ですが、ネットゲームは普遍的に2つの問題を抱えておりGBNも例外ではないように映ります。

まずGBNの運営がガバガバな(ように見える)事。
仮にログインを何らかのツールですり抜けたとしてもアバターが存在する以上行動ログは必ず残ると思うのですがワザと特定しなかったとしか思えないぐらい何も有効策が打たれていません。

とはいえ誤BAN(アカウント抹消)しようものなら炎上騒ぎになる上に、本当のチーターにも言い訳を与えてしまうので検挙には慎重にならざるを得ません。更に痕跡を全く残さない「ブレイクデカール」が超技術な事もあり、チーターまたはシバ・ツカサを特定したとしても証拠不十分となる可能性あります。

ネットゲームの運営は大体叩かれがちですがなかなかプレイヤー側が考えているようにはいかないのもまた事実です。

ただここまでの事態になっているのにサーバを開けっぱなしなのはどうでしょう。
バグによるフィールドの崩壊はバッファオーバーフロー攻撃による負荷でしょうし、ログの抹消、戦闘履歴の改竄となるとほぼシステムを掌握されているようなものですので、普通に考えると有志連合結成前に即システムシャットダウンで緊急メンテです。
これではメンテコストをかけたくないクソ運営と言われても仕方ありません。
というか危機感がなさすぎです。
そういえばGBNの運営費ってどうなってるんでしょうね。アイテム課金ぽいですが。
ここでも課金勢と無課金勢がバトルしてるんですかね。

課金
第15話「ロータス・チャレンジ」でオリジナルミッションの作成が可能と判明したので、重課金して小惑星を作ってアクシズ落とし阻止ミッションとか目論んでいる人もいそうです

また、マナー的に問題のある初心者狩りやPK(プレイヤーキラー)が横行とまでは行かなくても普通に行われているのはゲームが最盛期から成熟期に入ってきている事を伺わせます。
この頃になるとサービス立ち上げ時にあった「運営はよく頑張っている」という多少のミスやサーバダウンを労うプレイヤーからの声は鳴りを潜め、運営は「メンテが終わるとメンテが始まる」といった失態を繰り返し、だんだんプレイヤーに対して事務的な報告・対応が目立つようになります。

ですが依然としてプレイヤーの間での大きな争いは無くゲーム自体は楽しいと考える派が多数を占めているのもこの時期です。
そこにGBNの根幹を揺るがすブレイクデカール事件が発生しました。

このブレイクデカールが隣人レベルで広まっている事からもう一つの問題、プレイヤー民度も思っているほど高くない事も推測されます。

民度が低い
ですが一般的なネットゲームの民度とも言えます。
例えば露骨なチートには手を出さなくてもバグを利用したアイテム増殖が発覚すると一瞬で蔓延します。

GBNプレイヤーの手でGBNを破壊させるというのはGBNというビッグウェーブに乗れなかったシバさんにとってはこれ以上無い復讐になります。

それとは別に、作り上げても壊してまた作って何百回もアゲインアンドアゲインしてきたガチバトル勢であるシバさんには予想以上にGBN民のブレイクデカール(不正ツール)への食いつきが良かった事が「やっぱりこの世界はブッ壊すしかない!」という思いを強めた事は容易に想像がつきます。
「楽して強くなりたかった」はシバさんが一番嫌うタイプでしょう。

敵を倒せば経験パラメータを得てレベルアップできる一般的なMMOと違い、ベースとなる強さが実技術・工作力に依存するGBNでは強さの頭打ちが早いと思われる事から心的環境としてはチートツールに手を出しやすい状態にあると言えます。

データを書き換えるだけで敵無しになれるGBNの世界はシバさんにとっては到底リアルと認める訳にはいかなかった事でしょう。
更に言うと人の感情でパワーが増したり果ては光の翼などという奇跡を起こすのはまさにまがい物の世界の象徴のはずですが、本家のガンダムがよくそんな感じで奇跡を起こしているのでナイトロシステムというマイナー機能を仕込んでくるようなガチガノタであるシバさんはそこんとこどう折り合いをつけているのか聞いてみたい所です。

ナイトロ(n_i_t_r_o)
漫画「機動戦士ガンダム U.C.0094 アクロス・ザ・スカイ」などに登場するオールドタイプ(OT)にニュータイプ能力を付加するサイコミュ装置。GBNという新しい時代についていけないOTの自嘲か意地か

ブレイクデカールとはなんだったのか

シバさんが超天才ハッカー(クラッカー)である事はほぼ間違いないかと思いますが、そもそもブレイクデカールの基になったのは初心者救済(練習)用のイージー(チュートリアル)モード機能もしくはテスト用のデバッグ機能だったのではないかと思います。

開発時にバランス調整などで使用するこのデバッグコマンドをシバさんが発見して改造。
戦闘ダメージによる再出撃までクールタイムが必要なためダメージを無効にする無敵モードや、攻撃を受けて武装や部位欠損しても再生する復元モード、巨大化もイベントの特別な敵を想定したモードとも考えられます。

デバッグコマンド
パッケージ販売の場合はデバッグコマンドは潰すと思いますが、パッチによる調整変更が前提のネトゲでは残しているんじゃないかと思います

ただし結果として(もしくは意図的に)オーバーフロー攻撃となりバグが発生する事となってしまったと…。

ちなみに劇中でGM(運営)はブレイクデカールの正体を「極小ICチップを埋め込んだ不正パーツ」と言っていますがサイコフレームでしょうか。
パーツという「現物」をやり取りしているというのはどうなんでしょう。いまいちピンときません。
みんなご近所に住んでいる訳ではないですし後ろめたいし何より怖いしリアルには会いたくありません。

せっかく3Dスキャン機能を持ちログインキー端末でもある個人固有のダイバーギアがあるのですからアバター経由でギアに不正プログラムをインストールさせるのが手っ取り早い気もします。
まぁ、会えない人に郵送するためせっせと封筒の宛名書いてるシバさんも面白いのですが、何にしても世界規模で遊ばれているゲームのサーバを手玉に取るあたりそのスキルは天才的です。

お前そんな技術を持っていて何でまともな事に活かさないんだよ、と言いたくもなります。

ではスキルは一流なのに「破壊し尽くしてやる、この欺瞞に満ちた世界を…」や「塵芥と成り果てろ」など厨二病溢れる残念なセリフでめんどくさいこじれガノタ感をいかんなく発揮したシバ・ツカサとは、本当に小物界の大物だったのでしょうか。

シバ・ツカサを名も無き外道に堕としたモノ

前半出たり引っ込んだりを繰り返していた彼ですが12話でブレイクデカールを浄化され、13話でリクとGPDによる直接対決に挑みます。

・絆ガンダムの返却条件が「1対1で戦う」事であって「リクが勝ったら返す」と言っていない。しかも口約束ではなくちゃんと返してくれる。
・一人で来いと言っておいて仲間がいるかと思ったらタイマン
・GPDのシステムに慣れる前にボコるのかと思ったらちゃんと練習時間をくれる
・不意打ち無し、最後まで真っ向勝負
・初見殺しっぽい攻撃を「躱せよ」と警告してから攻撃
・初心者のリクにGPDのビームコーティング特性を説明
「ハハ、楽しいなぁ、ミカミ・リク!」とこぼれる本音
・サラとの通信中でフリーズ状態の時は待ってくれる

手段は完璧に間違ってますが割といい人です。
口は悪いが初心者を見かけるとウキウキして手伝ってしまうような彼の対応からは「ほら、GPDって楽しいだろ。GBNなんかやめてお前もGPDやろうよ」という強烈な熱意を感じます。

その歪んだ情熱はリクの「自分の好きで相手の好きを否定しないで下さい」という言葉に諫められるのですが、懐古主義から生じる新しいモノへの憎しみや諦め、達観というのは大なり小なり誰しもが持っているのです。
「昔は良かった」「最近の若いもんは」というのがそれです。
自分が嫌いなものを誰かが楽しんでいる事が、自分の好きなものを否定されるのと同じぐらい我慢できないという人もいるのです。

 

そもそもシバ・ツカサは元々コーイチ兄さんとGPDをプレイしていましたが、まずシバさんが先に袂を分かってGBNに移行しています

時系列
4年前にGBNがスタートし、「ほとんどのGPDプレイヤーが移行」。2年前にル・シャノアール(黒猫団)が結成され、いつの頃からか傭兵としてシバさんも在籍。

空白の時間は想像で埋めるしかないですがコウイチ兄さんの心が折れるまで戻ってこなかった事からそれなりの時間はGBNで過ごしていたと推測されます。
コーイチ兄さんがGDPを引退した頃がわかるといいんですが、最初から「GBNをブッ潰しに行こうぜ」と移行した訳ではないのは明らかです。
何があったのかはわかりませんがそこまでプレイ時間をかけた人間がゲームを辞める理由は3つしかなく、

  1. 飽きた(仕様変更含む)
  2. 運営対応の悪さ
  3. 対人トラブル

大体このうちのどれかです。

じゃあどれかって言うと根拠も何もないですが3番なんじゃないかと思うんですよね。
GBNの世界が嫌いだったのではなくプレイヤー(の態度や思想)が嫌いになったんじゃないかと。
よくある「作品やアーティストは好きだけどファンが嫌い」状態です。
直接顔を突き合わせて戦うGPDと違い、ネット経由のGBNは我々が良く知るネットトラブルも同様に発生しているでしょう。
暴言や煽り、負けそうになったらログアウト、負け確(勝ち確)放置、死体蹴り、ID再取得による初心者狩り、バグ使用など、一部GPDでも問題になっていそうな項目もありますが、ネットならではの「画面の向こう側にいる相手への扱いの軽さ」は皆さんも思う所があるかと思います。

こういった「マナーの悪い行為」はゲームのシステムや攻略手順がおおよそ解析されプレイ人口が増加した「成熟期」に発生しやすいものです。
表面上は楽しく真っ直ぐ技術を競い合う天国(エデン)のような世界でも、薄皮1枚めくればどこにでもいる愉快犯のようなプレイヤーと相対するたびにシバさんは憤りをつのらせていったのかもしれません。

それがいつしか世界全体への憎悪へと変わり、ブレイクデカールを開発したのではないでしょうか。
ネットを色々やっているとこういった怒りや挫折にも慣れていくのですが、彼はガンプラバトルが好きすぎたんでしょう。
ほんと迷惑でめんどくさい男です。

私の印象では良くも悪くも真っすぐひたむきな印象です。
戦闘スタイルにもそれが表れていますし、攻略wikiの通りに俺つえーしたいだけのテンプレ最強厨が作る機体ではないように思えます。
それが今回悪い方に転んだ感じで、リクたちのように最初からマギーさんたちのような人に出会っていればこんな事にはならなかったのかもしれません。
暴走した挙句これだけの事をして安易に改心して欲しいとも思わないですが、憎しみの原因が人的要因にあるのであれば、リクとの出会いでもう一度GBNとの付き合い方を考え直してくれるのはありなんじゃないかと思います。

ほんと時代に取り残されて文句たらたらなのに自分のやっている事が無意味と自覚していそうで、ヘタレでマダオなシバさんだけどそういうとこが人間臭いというか嫌いにはなれないですね。
再登場してくるかはわからないですが、またコーイチ兄さんと背中合わせのタッグバトルを展開してほしいものです。

幾多の戦いを経て機能を足し引きした結果左右非対称になるアストレイノーネイムのデザインは前々作ビルドファイターズのフェニーチェを思い出しますね。
これはノーネイムリナーシタが出る可能性もある(ない)