やっぱりマーカーとオスカーの区別がたまにつかない、ゆーいち(@ucu1k2)です
今回はMr.ホビーの新製品「ガンダムマーカーエアブラシシステム」(以下「ガンマカエアブラシ」)についてのレビューです。
目次:
ガンダムマーカーエアブラシは買いか
買いです。
「できる事」だけ見ればコンプレッサー付きのエアブラシとはもちろん比較になりませんが、「自動車があるから原チャリは必要ない」かというとそれは使用者のニーズによるはずです。
少し自転車で運動をしたい人に何十万円もするロードバイクを勧めるのは愚かですしね。
ただし買いとは言っても注意点や条件をいくつか満たす必要がありますので、ガンマカエアブラシの特徴を説明していきながら解説していきます。
ちなみにこの「HG アデル」はガンマカエアブラシでフル塗装したものです。この1枚で長所も欠点も見えて来るかと思います。
噴射円が外ほどまばらに広がるためグラデーション塗装はなかなか厳しいですが、そう広くない範囲のベタ塗りは問題なくいけます。
装甲紫(グラデ):ガンダムメタバイオレット
装甲黒:LBXダークブルー
関節部:ガンダムメカグレー
メリットについて
1.安価にエアブラシのような綺麗な塗装面が出来る事
なんといってもこれです。というかこれが全てです。
費用面でなく完成度から見て、綺麗な塗装面を作る難易度は
難← →易
「筆塗り>スプレー>エアブラシ」
です。そして筆塗りとスプレーの間に越えられないと言っていい壁があります。
商業誌で活躍されている筆塗りモデラーの筆ムラ一つない写真とかありますが、実際現物を見ると必ずしもそうではない事が分かります(とは言えほぼわからないので、もの凄い高い技術レベルなのですが)。
ガンダムマーカーは手軽に塗れる反面、二度塗りをしようとすると先に塗ってある塗装面を溶かしてしまうため筆の痕ができやすく、厚めに塗る事で軽減できますが今度は厚ぼったくなってしまうという難点を抱えています。
しかしガンマカエアブラシであれば先ほどのアデルをご覧の通り、メタリックレッドで塗った部分はモールドも埋まっておらず綺麗な塗装面になっているかと思います。
(ガンダムマーカーメタリックレッドで塗装)
2.準備が簡単、片付け(清掃)が不要
サッと準備出来てサッと吹けてサッと片付けられる。この小回りのよさは普通のエアブラシにはありません。
ちなみにガンマカエアブラシのような簡易エアブラシの先輩としてGCIクレオスから発売されている「プロスプレー ベーシック」があります。
こちらはマーカーではなく一般の塗料を使用します。
エアを吹き出すコンプレッサーの代わりにエア缶を使うもので、お値段は何とAmazon価格で約2700円。
ただしこれはいわゆるインクジェットプリンタの「インク商法」と同じで、エア缶のコストが非常に高くつきます。
更に問題なのがスプレーの仕様上、連続噴射するとエア缶が気化熱で冷たくなり、圧力が低下(変動)します。
低下すると塗料吹付に必要な噴射を得られないだけでなく、エアブラシの清掃に必要なエアも得られずエアブラシ内部で塗料が固まってしまう→取り除くために更にエアを必要とする、という悪循環にハマってしまいます(清掃用の常温缶を用意しておくことで回避できますがコストがかさむことに変わりはありません)
この「エア缶のコストがかかる」というデメリットはそのままガンマカエアブラシにも適用されますが、ガンマカエアブラシの場合「清掃の際にエアを必要としない。というかそもそも清掃がいらない」ため、その分のコストがかなり軽減されます。
加えて「清掃がいらない」というのはコスト的にも心理的にも助かります。ペンを抜いて蓋を閉めれば終わりですから。
清掃にはツールウォッシュなどの有機溶剤を必要としますが、この量が結構馬鹿になりません。
そして慣れれば3分で終わると言っても、しなくていいなら清掃とかしたくはないですよね?
3.有機溶剤を必要としない
これは環境面から見た大きなメリットです。
家に小さなお子さんがいたり、自身の体質や近所迷惑を考えてシンナー臭が発生する有機溶剤が使えない環境では、水性ホビーカラーやアクリジョン、シタデルカラーやファレホカラーなどの水性塗料を使用せざるを得ませんが、同様にアルコール系塗料であるガンダムマーカーも圧倒的に匂いが少なく、家人にあまり嫌な顔をされる事なく使用できるでしょう。
ただし、マーカー特有のアルコール臭やガス缶のガス臭がしない訳ではありません。
また、マーカー塗りや筆塗りと違いエアブラシシステムでは塗料をミスト状にして噴射するため、塗装ブースで覆うなどの対策が必要です。
ガンダムマーカーは染料が多めに含まれていて飛び散りはしても舞い散る感じではないので、個人的には新聞紙を引いた段ボールを用意すれば大丈夫なのかな、とも思いますが。
4.メタリック系をさっと吹くのに適している
これも大きなメリットの一つです。要はガンダムマーカーのメタリックの発色の良さを利用して、ワンポイントで使っていこうという事です。
例えばバーニア2か所だけ吹きたいのにいちいち濃度調節して、終わったら清掃とか萎えますしね。
しかし!
小さなパーツを吹くには微妙にクセのある吹き方をします。
上の写真でエアブラシのエアが白い矢印、ペン先の方向を赤矢印とすると、実際に飛ぶのは青色付近です。
目標物に対して少し上をノズルで狙う感じです。
ですのでコントロールは難しく小さいパーツをピンポイントで吹くのは向いていませんし、何かに試し吹きしてからの方が確実です。
エア1発目は塊が飛ぶことも多いので吹き始めをパーツに吹きつけないようにすれば事故はかなり減らせます。
5.ダマになっても大丈夫なアルコール系塗料
上で、ガンダムマーカーが塗ってあるところに更に塗ると下の色を溶かしてしまう、と書きました。
これがエアブラシではいい方向に作用し、ダマになっても吹き続けると溶かして伸ばしてくれるのでパーツをクルクル回しながら多方面から吹き付けると割とフラットな面が簡単に作れます。
デメリットについて
ここからはデメリットになります。デメリットというか作業工程上必ず引っかかる点です。
1.エア缶が高い(ランニングコストがかかる)、エア缶の出力が安定しない
ガンマカエアブラシ付属のエア缶は約500円。
大体HG1体で缶1本ぐらいが目安のようですが多分持ちません。途中で切れると大変なので、常にストックを用意しておく必要があります。
というか作例では全体塗装が良く出てきますが、基本的には部分塗装用のシステムです、これ。
更にエア缶を連続使用すると気化熱により結露して性能が落ちるのは先ほど書いた通りです。
作例のように全体塗装でもいいですがコストもかかりますので、ガンダムのアンテナやバーニアなどの小物、合わせ目消しをした部分や白化したゲート跡を消したい部分に吹くなど、全体の完成度を上げる方向で使ってみるのがいいのかな、と思っています。
というよりもこのエア缶のコストにより、早晩ガンマカエアブラシは使わなくなります。これは予言してもいいです。
なら買わない方がいいのか、というとそうではありませんのでもうしばらくお付き合いください。
2.ペン先塗料の出し直しと位置決め作業が頻繁に発生する
だいたいHGの中型パーツ2つ吹いたあたりでペン先に出しておいた塗料が全てエアで吹き飛ばされます。
ペンによっては1つで終わりますのでその都度ペンを抜いてペン先に塗料を充填しなければなりません。
これが非常に面倒くさい。
ただし同時発売された専用のペン先に変える事で充填回数は軽減されます。
というよりも使ってみた感じでは、専用のペン先への変更は必須です。粒子の飛び散り方も安定しますしね。
ちなみにペン先はラジオペンチみたいなもので摘まむか、なんなら指でも引っこ抜けます。
そして何気に厄介なのが位置決めです。
この1.5mmぐらいの隙間で位置を調整します。下過ぎるとインクが飛びません。上過ぎるとインクがダマになって飛びます。
綺麗なミストで飛ばせるスイートスポットは限られています。
上でも述べましたが試し吹きは必須です。
3.色数が少なく調色が出来ない。
何気にこれが一番の問題かもしれません。
ガンダムマーカーは記事執筆時点で全33色、内6色がメタリック系ですが、現実的に調色が困難である事を考えるとこの色数内でやりくりする事になります。
現在は販売終了していますが、ダンボール戦記の「LBXマーカー」や三国志ガンダムマーカーなども使えますね。
とは言え全て似たような色で塗っていても飽きが来るのは早いでしょう。
そこで今回は別途3種類のマーカーを用意しました。
1.ガイアノーツ 4アーティストマーカー
Pebeo 不透明油性ペイントマーカー 4アーティスト マーカー 2mmラウンド ゴールド
一番のおすすめ。
ペンの径が細いので太らせる必要があります(私は厚めの両面テープを巻きました)
見た感じ激しく飛び散っているように見えますが、ガンマカエアブラシの噴射は大体こんな感じです。
エア一発目が激しくしぶきが飛ぶので、まずティッシュなどにそれを捨て、そのままエアを吹いたままパーツを持ってくると綺麗に吹けます。
プラにも滑らかに食いつくのでおすすめの一本ですね。
大きめの画材屋に行くと赤や緑など全18色揃えてあったりするのですが、模型屋などだと金銀銅あたりしかなかったりするのが残念ですね。
2.マービー ドローイングマーカー
新宿のオカダヤ別館で購入したマーカーです。コピックと同様にイラスト着色で使用するようです。
コピックマーカー同様に多くのカラーが揃っています。
早速吹いてみました。
筆先が柔らかく良くしなるせいか、濃度のコントロールが難しい印象です。コピックも同様ではないかと思います。
(コピックはガンマカのような固めの筆先タイプもあったかと思いますが。)
クリアパーツの表情付けには良さそうな感じがしますが、それなら直接塗ってもいいんじゃないかなぁ、的な。
3.ポスカ
細ペンタイプはガンマカと径が同じなのですっぽり入ります。
ただ細ペンタイプが黄色しか持っておらず、総じて隠ぺい力の低い黄色というのが悪かったんですが、
まずプラに色が乗りませんでした。というかデカい雨粒がそのまま飛んでいくイメージです。
仕方ないので#1000のサーフェイサーを吹いてから黄色を吹いてみましたが、ううーん…?
つや消し下地でないとだめでしょうか…
重ね塗りしていけば綺麗に発色する気もしますがまだ未検証です。とりあえず黄色はやめましょう。
他にも使えそうなペンは色々あるかと思いますが、「色が足りないな」と思ったら次のステップ、すなわちコンプレッサー式エアブラシに進むべきなのかもしれません。
ガンダムマーカーエアブラシは滑らかな塗装面に感動してもらえば役目の半分を終える
私はガンダムマーカーエアブラシシステムを買うにあたって必要なのは、
「3,400円分楽しめれば良し!」という開き直りじゃないかと思います。
分かっているとは思いますが、決してこれはずっと使っていけるものではありません。
ずっと使っていくのであれば、8700円まで出すとエアテックスの「METEO」や8400円でクレオスの「プチコンキュート」が購入できます。
エアテックス エアーブラシ ワークセットMETEO (メテオ)
GSIクレオス Mr.コンプレッサー プチコン・キュート PS371
これらは間違いなくガンマカエアブラシよりも色々な事が出来ます。いずれ使わなくなるのなら最初からそちらにすればいい、というのはごもっともなんですが、それで割り切れたら苦労はしないですよね。
原理としてはコピックエアブラシのように昔からあるこの装置がなぜ大きな注目を集めるのかと言えば、想像しているよりもずっと「エアブラシを吹いた事がない人が多い」からなんだと思います。
ある種の憧れですよね。私もエアブラシを持っていない時はそうでした。
エアブラシならもっと薄く綺麗な塗装面になるんだろうな、と。
私としては、マーカーを筆に溶いて丹念にムラなく伸ばして塗っている人ほどこのエアブラシを使ってもらいたい。
「筆ムラがない」というのが思わずガッツポーズするぐらいどれほど感動する事かガンマカエアブラシは教えてくれます。
それぐらい自分が吹いたエアブラシ塗装面を見た時の衝撃は計り知れないです。
色が限られていたりエア缶コストがかかったり色々な制限はありますが、この塗装面は手持ちのマーカーで出せるんです。
ベタ塗りならガンマカエアブラシでもいけますしね。
手持ちのマーカーと付属のエア缶、ついでにもう一つぐらいエア缶購入してもいいかもしれません。3,400円分は絶対に楽しめます。
むしろこれを足掛かりに本格的なエアブラシ導入への道標としたいのであれば、3400円ではなく3000円切るぐらいまでクレオスさんに頑張ってほしいですね。
GSIクレオス ガンダムマーカー エアブラシ システム ホビー用塗装用具 GMA01