【なな】ブルーティッシュドッグを組み立てからウェザリングまで!【むせた】 を更新しました!

失敗しない!デカールを貼る「位置」を理論化してみる。その1

デカール集めが大好き(使うとは言ってない)、ゆーいち(ucu1k2)です。

苦行とも言えるヤスリ掛け、スジボリを経て塗装、後はトップコートを吹くだけ、となった作品の最後の障壁とも言えるのがデカール貼りです。
上手く貼れてはいるけど、配置に微妙に納得いかなかったり、せっかくここまで作り上げてきたものがデカールで失敗してしょぼくれてしまった経験、ありませんか?
webには高密度でセンスあるデカールの作例があふれていますが、センスは個人の感性に委ねる所が大きく安定しません。

センスという単語で片付けるのは本当に簡単なのですが、今回はタイトルにもあるように失敗をしない、すなわち「及第点を取れる」デカールの貼る場所を考えていきます。

デカールはセンスでなくルール決め

まずは下の図をご覧ください。 (クリック/タップで拡大) このMG νガンダム(Ver.ka)のデカールワークはガンプラの教科書に載せたいまさにお手本のような「手堅い」配置だと思います。
Ver.kaというと赤い「ハの字」コーションマークでゴテゴテした印象がありますが、このνガンダムはシンプルながら要所を引き締め、三箇所に配置されたアムロのパーソナルマークで視線の誘導を行っています。 (右向き斜め立ちから見ると考えて、肩→スカート→ふくらはぎで全体を見せる) (クリック/タップで拡大) 画像からデカールの位置を抜き出したものがこれです。
多すぎず少なすぎずシンプルにまとまっていますね。

さて、デカールには大きく2種類あります。

・注意書きなどの小さいデカール
・部隊章、パーソナルマークや識別番号などの中・大型デカール

ルールに沿って貼るのが小さなデカール、 対して大きいデカールは目立つ場所に貼る事が唯一のルールです。
これを踏まえた上で、今回のエントリーではルールが必要な小デカールの説明を行います。 (大きいデカールについては次回のエントリーで)

本当によくよく意味を考えながら貼ってる?

よくデカールの貼り方の話で挙げられるキーワードとして以下の二つがあげられます。

・集中と拡散
・なぜそこに貼るのかデカールの意味を考える

「集中と拡散」を字面通りに受け取ってはいけません。
逆説的に「空間を作る(残す)」事と解釈してください。
80点を取るためのデカールの貼り方は、いかに貼らないか、という事が重要です。
シンプルなデザインは見ている側が脳内で補完してくれますが、脳内補完を殺すぎっちり密度を詰めたデザインは賛否が分かれやすくなります。

そもそも考えるも何も目立つ注意書きが書かれる場所は大体限られています。
可動部周辺かバーニア・スラスターなどの高熱を発する部位、爆発物(エネルギーパック)、非常用(脱出)機構などです。
HGレベルのサイズであればわざわざ装甲に貼らなくてもこれらの重要警告部位に貼ればそれなりのボリュームになります。
逆に何の変哲もない装甲に何が書いてあるんだろう、と考えた事はあるでしょうか。

等身大ガンダムでは
ちなみにお台場の等身大ガンダムの装甲はよく見ると、「マニュアルよく見てボルトを締め過ぎないでね!」という警告文とボルトとワッシャーの品番の指定、トルク(締め付け力)の指定が1セットになったものが大半です。あとは手動レバーに「Manual Release」、窒素使用部位だよマークやその他ちょこちょことWarningマークがあるぐらいです。 ボルト警告なんてプラモデルで一つ一つ拾っていったらとんでもないデカールの量になりますね。

だからデカールの意味を考える、なんていうのは「バーニアの近くに高熱警告」や「メンテナンス用ハッチやレバーの近くに指示書き」など、機能と連動した数か所だけでよく、色も赤や黄色などの一般的な警告色にしておけばOK。
小難しく考える必要はありません。
これらの警告は誰にでもわかるよう恒久的に汎用的なものですので何も考えずルールに従って貼ってください。

注意
あと、強いて言えば水中用モビルスーツに宇宙軍の徽章とか脳内設定が必要なものはまた話が別という事で…。でも西洋甲冑系に漢字のデカールでもおかしくないと思いますよ。バウ(𪚢)とか。

それ以外の部位についているものはただの模様です。
「集中と拡散」が謳われるようになったのは「ガンダムセンチネル」のブームからだと記憶していますが、この頃から「デカールとは模様でありデザインである」という意識が浸透したように思えます。

νガンダム腕部で見る「拡散」と「安定した角度」

νガンダムの肩腕部分を拡大してみました。
三枚貼ってあるので肩で三角、前腕で三角に配置されているのが分かるかと思いますが重要なのはその形です。
肩ブロックは外側に長い三角形、大して前腕は二辺がほぼ同じ長さの三角形です。これはその部位の形状に依存しています。

では別の配置にするとどうなるか。 元々のデカールを消して、内向きに細い三角でデカールを配置しました。中心に集まる事で肩の「ずんぐりむっくり」感が多少生まれたかと思います。
前腕も手首側に長い三角形配置でシャープさが生まれたように見えますが、なにか違和感があるように見えませんか。
この違和感はデカールを貼る方向によるものです。 基本的にデカールはパネルラインに沿って貼るものですが、上図を見てもらえると同一ブロックごとまたは全体で角度を統一しているのが分かるかと思います。
ただ、マル1は法則から外れてパネルラインを無視して地上(または胴体)と水平に取られています。水平に取る事で見た目の安定感を優先したのかもしれません。
逆にマル2は胴体部から続く角度に揃える形でパネルラインを無視して貼られています。
特に胴体からスカートにかけて、赤いマークがほぼ等間隔で並んでいるのにお気づきでしょうか。
こういう規則性に基づいた連続性は見ている人に落ち着いた印象を与えます。 それを踏まえてもう一度先ほどの図を見ていただくと前腕のデカールはそれぞれのパネルラインにこそ合っているもののまるで方向がバラバラですね。
特に手首の微妙な角度ずれが非常に気持ち悪い。
コーションマークなんて整備士が気づきやすく作業しやすい方向で書く(貼る)ものなので、納品時ならともかくボロボロになるまで使っててぶっちゃけ綺麗に揃ってる訳が無いんですが、ガンプラにおけるコーションマークは模様でありデザインなのできちんと自分なりの法則をもってそろえる方が綺麗に映ります。
上図の場合ですと、手首に貼るぐらいなら貼らない方がマシです。

この貼る角度によって印象がどうなるかを下図に示してみました。 正面図を見ると分かりやすいですが、
・肩ブロックは斜め上方向に
・腕ブロックは真下に
・胴体~脚部の体幹ブロックは地面と水平を意識しながら下方向へ という安定した流れが出来ているのが分かるかと思います。

側面図では斜めに配置することで前進力のモーメントを意識させています。
逆にふくらはぎ周りを水平に配置すると真下方向、つまり安定感・重量感が出ると思います。

この角度や方向を意識する事で違和感のない配置になります。

小さいデカールを「貼りすぎ」ないためのマイルール

ここまでで小さいデカールの「法則」や理論はある程度わかっていただけたかと思います。
実際どの装甲色にどの色のデカールを合わせればいいのか分からない人もいるかと思いますが、それを語り出すと長くなるので次回に回します。

とりあえず言える事は、

・黒デカールは使うな、灰色を使え

特に白地に黒文字という最高コントラストは、もはや別パーツのような存在感があり否が応でも目を引き、悪目立ちします。使い方次第では猛毒です。 (使うなと言いつつ、決して絶対禁止という意味ではありません。灰色にしていた方が「安定」するぐらいの意味です)

さてタイトルのマイルールに戻りますが、一つ例を挙げてみます。
・HGであれば各ブロックの1面に対し1枚以下(MGなら2枚)
・貼る方向(角度)を揃える ・ただし機体が左右対称であれば必ず対称に貼る

これは今、私が適当に考えました。
が、なんとなく「ああ、これは少なくとも失敗はしないな」というのがわかる条件付けだと思います。
そしてガンプラにおける小デカールなんて大体貼る位置は決まっています。

実際に例を挙げてみてみましょう。 どこの戦場にでもいる普通のゾゴックです。
このゾゴックに先ほどのマイルールで貼り込んでみます。 白色のコーションデカールをメインに、特に取り扱いが危険そうな頭部のブーメランユニット部には黄色と白の強調デカール、そのデカールと逆三角形体型を形成するチンガード部に同じく黄色、重量感のある足には広めのデカールを置いて下方向へのベクトルを意識させています。
腕と脚は重量感を出すために横向き貼りですね。
ほぼ全て、パーツの際に寄せる事を念頭に置いています。
シンプルですが、違和感はないと思います。 もう少し盛るとこんな感じです。
蛇腹部など同じパーツが連続する所に等間隔同位置で同じマークを貼っていくのは定番ですね。頑張ってブーメラン1枚1枚に貼ってもいいでしょう。
膝から下の黄色い丸のあたり、ここのパネルラインに沿って線を引くと昔のMSVっぽくなるのでそれは外してみました。
90度の折れ線を入れるとどうしても古さが出てくる気がします。 特定の年代にはヒットするんですけどね。

 

次回予告

書きたい事はまだたくさんあるのですが、思っていた以上にエントリーが長くなってしまったので次回に続きます。 次回は以下の項目を予定しています。

・装甲色との関係性
・大デカールこそ戦場の華よ
・デカールとは刺身タンポポである
・センスがいいと言われるデカールワークは何が上手いのか

ハイキューパーツさんのデカールはデザイン的にも使いやすくていいですね。
特にこの「赤&グレー」「橙&グレー」の組み合わせはクールだと思います。

目を引くデザインの「A.O.Z ティターンズの旗のもとに」用デカールは大人気ですね。すぐにプレミアがついちゃいます。
再販されたら即買い基本ですよ、使おうが使わまいが!