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失敗しない! 色彩からデカールセンスを法則化する その2

このエントリーは「失敗しない!デカールを貼る「位置」を理論化してみる。その1」の続きとなります。こんにちは、ゆーいち(ucu1k2)です。

失敗しない!デカールを貼る「位置」を理論化してみる。その1

模型におけるデカールの貼り方に100点はありません。
密度たっぷりのゴテゴテしたデカールが好きという人もいますし、最小限度の枚数でシンプルにまとめるのが好きという人もいるでしょう。
自分がどの方向を目指したいのかは手掛けている作品にもよるかと思いますので、こうすれば正解、ではなく、「間違わないための方程式」を提示するのがこのエントリーの目的となります。

前回はMGνガンダムを例に小デカールを貼る位置、向き(角度)を考察しました。
今回は主に色彩の面からアプローチします。
法則化がテーマですので、今回も極力センス(という言葉)に頼らない方向でいきます。

デカールの密度は造形の密度に合わせる

まず基本的な所からですが、出来上がったモデルに対してデカールがちぐはぐな印象を受けるのは、大抵双方のバランスが悪いせいです。

  1. 高密度のディテールモデルは細かいデカールワークも許容する
  2. 低密度のモデルは細かいデカールを許容しない

高密度だからと言ってデカールを貼りまくらなければいけないという事はありませんが、低密度のディテールに対して過剰なデカールは違和感を覚えます。いわゆる頑張り過ぎちゃった状態ですね。


前回の例でも使ったゾゴック、頭部ブーメランや手甲などまだ貼れる場所はありますがこのディテールであれば大体このあたりが丁度いい塩梅だと思います。これより増やすのではあればスジボリや追加パーツなどで情報量を増やしてからの方が違和感が無くなります。

ですのでまず、自分のモデルはどのぐらいのデカールを許容するか、を想定してみてください。

デカールとはデザイン(模様)である

しつこいようですが模様という意識があるか無いかでは仕上がりが全く違います。

要はスジボリで情報量を増やすのと同じなのですが、もの凄いスジボリスキルでパネル分割している作品とか冷静に考えると「何故そんな複雑なラインで板金を製造しようと思ったの?」となります。

モビルスーツというのは名乗りを上げていた時代の騎士の鎧ではなく工業製品ですから、コスト・納期・メンテナンス性や安全工学、耐久性など考えなければいけませんし、そうすると自然と分割や開閉箇所は素直な形で最小限に収まっていくはずです。

メンテナンス
精密機器の集合体であるMSが破損した場合、アッセンブリ交換(腕なら腕を丸ごと交換)になるようです。ガンダムMk-IIも2号機は(交換用の)パーツ取りに利用されていました。
破損の度合いによってはパネルのみ交換、上腕部だけ交換もあるかと思いますが、どこまでダメージが浸透しているかわからないのでパイロットとしては丸ごと交換の方が気が楽ですね

少し話がそれました。要はリアリティを考慮すると複雑なスジボリはありえないのですがなぜそれが格好いいかといえば恰好いい(とされる)模様だからです。
デカールも同じです。

もちろんデザインには流行り廃りがあり、例えばMSVでよく見られた装甲に沿って線を引くラインマーキングや下▼は、当時は格好良かったのですが今の時代だとちょっと古臭く見えます。

なんというか…ゴチャッとした印象を受けますね。
パッと見、黄色のラインが全て悪い気もします。黄色の文字は問題なさそうなんですけど。
というのも後述しますが、コーションマークで使われる赤や黄色、特に黄色というのは取り扱いの難しい色だからです。

逆に言えば取り扱いが難しい=目を引く=注意書きに使われる、という事でもあります。

白・グレーのデカールを使っておけば事故らない。

黄色に限らず色を扱う事は残念ながらセンスを必要とします。ではミスしないようにするにはどうすればいいか。
それが、モノトーンにすればいい、という考え方です。
なんだかがっかりとんちでドヤ顔する一休さんみたいですね、でもそれでいいんです。

まず白ですがモノトーン色というのは背景(下地)を選びません。背景を選ばないという事は色彩コーディネートのセンスを必要としないという事です。
グレーも同様の理由です。黒文字でもいいんですが黒だと悪目立ちする所を明度を上げて馴染ませます。
ゴチャる可能性があるというだけで黒デカールも貼りすぎなければ大体問題ありません
白地に黒デカールは引き締まりますしね。

ではコーションマークによくある赤色・黄色・オレンジはどこで使うのかと言うと、まずは下図をご覧ください。

でた! 色相環です。
またこれか!と思った方もいると思います。デカールよりも配色の勉強をすると必ず出て来るのがこれです。
補色だなんだのえらそうに言ってるけど、結局どうすればいいのか分からないアレです。

プロデザイナーでも永遠の勉強と言われるほど色彩学は深いですが今回は「色彩」と「デザイン」から見た法則(ルール)の一つとしてこの3つを覚えておいてください。

  1. 緑青紫の装甲には色付きデカールを使わない
  2. 赤や黄色などの色付きデカールは白と黒の下地に使う
  3. 灰色の装甲には赤と黄色は使わずオレンジを使う

デカールにおける色彩の扱い方で重要なのは、デカールと下地色を合わせた時に「いかにしてハレーション(チラツキ)を避けるか」です。
「クドイ」と感じられるデカールは大抵このハレーションを起こしています。
上記の3法則は最大限そのハレーションを避ける法則になっています。

順番に解説していきます。

1.緑青紫の(寒色)装甲には色付きデカールを使わない

青に対するオレンジ、緑に対する赤や黄色に対する紫は色相環においてもっともコントラストが高くなる「補色」の関係にあるとされます。
補色と言うとなんだか融和性が高く馴染みそうなイメージがありますが実際は逆で、補色同士を混ぜ合わせると「灰色」になる事から実際には組み合わせるだけでも「灰色」のくすんだ印象情報を視覚が感知します。ぼやけて見えるんですね。

青い装甲と言えばグフという事で実際にMGグフのデカールを見てみると、


実際はほぼ白です。微妙に黄色の小デカールがありますが多くはバックパックなどの黒い部分で使われています。ジオンマークはもうこの色なので仕方ないですね。青は紫下地よりは黄色が馴染みやすいです。

補色話のついでになりますが、日本中のだいたいどこでも見るこのロゴ、
緑と赤で喧嘩しないのか、というと緑と赤を白で切り離す事により「補色のコントラストの高さを残したまま色を濁らせない」配色になっています。
ですので同様に、黄色でも赤でも白で囲ってあるデカールは大体どこでも使えます

セブンイレブンのロゴ
赤色も緑も目にどぎつい原色は使わず彩度を落とした目に優しい色である事もポイントです

2.赤や黄色などの色付きデカールは白と黒の下地に使う

デカールを貼るに当たって白下地は万能色です。思いつく限りでタブー色はありませんが、黄色単色のデカールは明度が高いため目立ちません。
黒もほぼ万能色ですが一番強い隠ぺい色である事から、透過率の高いデカール(細い文字など)は下地の黒が透けたり紛れたりで目立たなくなります。
赤と黄色の混色であるオレンジ色のデカールは白・黒どちらにも対応します。

ただ一つ問題があり、最近は純黒は避けて限りなく黒に近いグレーを使っていく傾向があります。
この濃いグレーというのがとても厄介な色で、濃度によっては特に赤色と合わせるとハレーションを起こしがちな組み合わせになります。

そこで灰色に対しての回答が3番です。

3.灰色の下地には赤と黄色は使わずオレンジ・白黒を使う

白黒と同じ無彩色の灰色は特殊です。
装甲色の灰色の明度にもよりますがまず黄色は目立たないためほぼ使えません。
また、原色である赤緑青は灰色に近い属性のため、灰色との相性が悪い傾向があります。
(ハレーション=チラツキを起こしやすい)
そこでオレンジを使用します。赤色の鮮やかさと黄色の明度のいいとこ取りといった所でしょうか。

また黒文字デカールも灰色下地であれば白地に比べてコントラスト比が緩和されるため馴染みやすく問題なく使っていけます。

MEMO
灰色下地やデカールの明度のバランスによってはハレーションが発生しないのですがこのエントリーでは分かりやすく「赤黄色は使わない」としておきます。

目立つデカールと目立たせないデカール

絵画やイラストなどではもちろん自分が意図した通りの色を作って塗る事が出来ます。プラモデル自体も自分が意図した色で塗りますよね。
ですがデカールだけはとても不自由です。使用に耐えうる綺麗なデカールを自作するのはエアブラシを揃えるよりもハードルが高いと言えるでしょう。

ですのでこればかりは市販されているもので戦うしかありません。
そこでデカール自体のデザインはもちろんですが「明度・彩度」を意識するとまた一つ見方が変わってきます。
明度とはデカールの明るさ、彩度とは鮮やかさです。

各社から販売されているデカールはどんな下地色にも馴染むように色調を調整している物がほとんどですが、その中でも「鮮やかな赤、暗い赤」がありますよね。
まず真ん中のマークが一番鮮やかでそれぞれ明度を上げ下げしたものが左右のマークになります。
市販のデカールの色調の幅はせいぜいこのぐらいじゃないかと思いますが、この鉄華団マークを色々な下地に貼ってみます。

量産型ザク基本カラー

ドム基本カラー

シャア専用基本カラー

ザクレロ基本カラー

ティターンズ基本カラー

いかがでしょうか、下地色によって馴染む赤と馴染まない赤があるのがわかるかと思います。

右の薄い赤は概ね馴染んで悪目立ちしないように見えますね。
左の暗い赤は暖色系下地には強いですが、寒色系だと人によっては違和感を覚えるという所でしょうか。

一番最初の白下地の時は、真ん中の鮮やかな赤が一番はっきりと見えたんじゃないかと思いますが色が変わると逆に真ん中の鮮やかな赤はどうにも使いづらいように見えなくもありません。

しかしながら「馴染まない」という事は目立つ、という事でもあります。このあたりのバランスが難しいんです。
個人的な感想で言えば例えばティターンズカラーでは薄めの右か、できれば真ん中の赤を使いたいですね。

今回のエントリーでは「色付きデカールは寒色系」に絞っているのですが、要するに

デカールは下地色の影響を受ける

という事です。
いや、当たり前じゃんと思ったかと思いますが、デカールの事を考えて塗装色を決めている人ってそんなにはいないと思います。
大体は塗装色に対して違和感無さそうなデカールと場所を選ぶ、になると思いますが、前述の通りデカールの色はあまり選択肢がないので、使いたいデカールがあればその色調に対して塗装色の方をコントロールしなきゃいけない訳です。これって結構重要な事なんじゃないかと思います。

とは言っても下地色が白やほぼ黒であればこの問題は解決します。
同じ白でも赤黄色みがかったウォームホワイトや、青白いクールホワイトがありますがまず問題はないでしょう。

最初にデカールは模様、と言いましたが、デカール量が多いのにゴチャついた感じを受けない人はこのあたりの色彩・彩度・明度に対する感覚が鍛えられていて、自然と人の目を紛れさせる「目立たせないデカール」の使い方をわかっているんじゃないかと思います。

わかりやすい例で言えばシャアザクの赤い装甲に対して暖色系のコーションマークを多めに貼ってもさほどチラツキません。
これは色相環でいう所の隣接色相にあるからで安定している、失敗しにくい配色だからです。

今回のまとめと次回予告

  • モデルのディテール量でデカール量を決める
  • 白下地は万能、色付きデカールはここで使え
  • 白文字デカールも万能、黒文字デカールは使いすぎない

前回のエントリーをご覧になってない方はこちらも合わせてどうぞ。

失敗しない!デカールを貼る「位置」を理論化してみる。その1

今回は前回予告した「装甲色との関係性」に重点を絞る事になってしまったので残りの、

・大デカールと視線の誘導
・デカールとは結局刺身タンポポである
・センスがいいと言われるデカールワークは何が上手いのか

この3つについて解説します。


エントリー書きました。最終回です。
失敗しない! デカールの貼り方をセンスに頼らず法則化する その3

 

白文字とオレンジというド安定の失敗しない配色のデカール。一枚あると色々使えます。