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スプリッター迷彩?スプリンター迷彩?プラモで学べるドイツ語講座

オタクの例にもれず迷う事無く第二外国語でドイツ語を選択したゆーいち(@ucu1k2)です。

トップ画のフルアーマーガンダムのようなスプリンターパターン(折れ線迷彩)塗装。ガンプラの作例で見かけますが、模型界でたまに話題になるスプリッター迷彩とスプリンター迷彩、どっちが正解なの問題について今回は語ります。

ググってこのページに来た方はすぐにでも正解を知りたいかと思うのでさっそく答え合わせです。

答え:両方正解。

 

ただしスプリッターは英語ではなくドイツ語。
また、スプリッターではなく「シュプリタ(ー)」表記がドイツ語の正規発音に近く、100%正しいのは「スプリンター」。

以下解説です。

みんな大好きドイツ語についても学んでいきましょう。

そもそもスプリッター迷彩って?

まず、模型界隈、とりわけガンプラ界隈で使われる「スプリッター迷彩」とはなんなのか。
プレミアムバンダイで発売されたジェガンD型をご覧ください。

このモデルは公式に「スプリッター迷彩」仕様であると明言されています。

「破片」を思わせる不規則な折れ線で構成された多色多角形を散りばめた迷彩の一種と定義され、元々は「(キース・)フェリス迷彩」と呼ばれるものです。
MSのような巨大構造体に対し写真の様に多角形のパターンが大きい場合、いわゆるカモフラージュ(同化)効果はありません。
かと言って機体形状を眩惑させるには迷彩が控えめ(大雑把)で効果は期待できません。

したがってほぼノーズアートと同じ、ただのカラーバリエーションの一つと考えて良いでしょう。

模型ではマスキングテーブを利用して塗装が容易な事、また単純に恰好が良いなどの理由から人気のある塗装法の一つとなっています。

Splittermustertarnungmalen.(独)

一番最初に「スプリッター」はドイツ語と話しましたが、「破片」を表す単語は

英語でsplinter(スプリンタ)
独語でsplitter(シュプリタ、IPA: [ˈʃplɪtɐ])です。

つまりドイツ語のsplitterを英語読みしたため「スプリッター迷彩」という単語が生まれた訳です。

ドイツ語の場合、文頭のspやstの「S」はシュと発音します。
シュプリタのタはオの口の開き方でアを発音するイメージです。

余談1

ローマ字表記の影響で日本ではttやppのような二重子音は「ッ」と発音するように習います。

ですがappleもカタカナで書く時はアップルですが、「ネイティブっぽく発音してみて」と言われるとアポル(アポー)って発音しませんか?

多分「ッ」や「-」を入れて発音する方が日本人が単語の区切りを理解しやすい、そして語感が合うんだと思います。

そもそも英語や西洋語には促音、つまり小さいツはありません。日本語で発音(理解)しやすいように「ッ」を入れているケースがほとんどです。
ついでに言うと語尾を伸ばす事もあまりありません。いわゆる「フォルダ」か「フォルダー」論争に繋がります。

余談2

  • ですので英語をネイティブっぽく発音する時は母音をはっきり発音せず、「ッ」と語尾の長音「-」を無くすと(ついでにやや早口)、ネイティブに通じるかは置いといてそれっぽく聞こえます

ドイツ語は英語と似ていることから読み方を混同するケースが多く、また中途半端に「ドイツ語はローマ字読みできる」という認識が広まった結果、例えばドイツ語のTiger(虎)を「ティーガ(ー)」ではなく「ティーゲル」と誤読するケースが見られました。あれば銀河帝国訛りでしょう、多分。

余談3

  • 自軍の艦隊「黒色槍騎兵艦隊 schwarz lanzen reiter(シュバルツ・ランツェン・ライター)」をシュワルツ・ランツェン・レイターと呼んだりして、ビッテンフェルト提督の訛りはかなり強い様子

で。

スプリンター(模様)迷彩塗装をドイツ語で書くと、

Splitter(Muster)Tarnung Malen(シュプリタ ムスタ ターヌング マレン)

となり、特定の界隈ではtarnung(迷彩)はtarn.と略される事もあるようです[要出典]。多分カモフラージュの略称がcamoみたいなもんでしょう。

英語では単語を一語ずつを離して書きますが、ドイツ語では漢字のように単語同士を繋げて書きます。つまり、

日本語では破片模様迷彩塗装

独語ではsplittermustartarnungmalen

英語ではsplinter patterned camouflage paint(ing)

単語の意味を知らないとどこで区切るのか全然わからなくなりますね。
東京海上日動生命安心火災保険も外国人にはそう映っているかもしれません。

ターヌングは英語のカモフラージュ(camouflage)にあたります。

余談4

  • カモフラージュのモも英語でカタカナ表記が難しい発音です。アの口の形でオを発音する感じでしょうか。
    もともとの語源であるフランス語読みではカムフラージュです。
    この単語の場合の「ou」はウの発音になります。

どうしてこうなった?

そもそもの原因は前述の通り、独語のSplitterを英語読みしたことが原因です。

そして「ガンダムセンチネル」企画展開の中で、フェリス迷彩をガンプラに落とし込んだ技法に対し「スプリッター迷彩」という名称が提示され、ガンプラモデラーの間で定着したという事で間違いないと思います。

伝播する際にもsplit(スプリット、分割)という英単語が日本人にも馴染みがある事、また意味も分割という「破片」に近しいものであることから混同してしまったものと推測されます。

余談5

  • 英語のsplitにerを付けたsplitterは単純に「(何かを)分割する人、モノ」という意味になります(例えば魚を解体する人、映像信号分配器など)。

また英語におけるsplinterですが、日本人には同じ発音に聞こえやすい単語にsprinter(スプリンター)があります。こちらはご存知の通り短距離走者を表す単語です。こちらの意味の方が馴染みがありますね。

トマトの最初のトと最後のトは違う発声法でありながらカタカナ表記では違いが分からないように、カタカナで書く分には短距離走のスプリンターと英語で迷彩を意味するスプリンターの区別がつきません。

スプリンター迷彩と表記した場合、「間違いではないか?」と違和感を覚えるのも「スプリッター」が使われるようになった原因の一つかもしれません。

余談6

    例えばニューハーフを意味する「drag queen」ですが、カタカナでは薬物を意味する「drug」と区別がつかないため「ドラァグ」表記が生み出されたと考えられます

これがもし、なるべく正確に発音記号を拾ってシュプリター迷彩またはスプリター迷彩などと書かれればそちらが定着していたかもしれませんね。

マクダーナルズをマクドナルド、メースィーディズをメルセデスとしたように、カタカナで読んだ時の発音の気持ち良さを重視する傾向があると思います
(いわゆるカタカナ英語ですが、これはどの言語にもある事で言語文化として何も恥じることではありません)

withのthなんてカタカナじゃ書けないですしね

さいごに

ざっと調べた感じでは「ガンダムセンチネル」の影響かガンプラ界隈と、あとバイク界隈でこのスプリッターという名称が使われている印象。
逆にスケールモデル界隈やサバゲー界隈では「スプリンター迷彩」が用いられているようです。

ですので、使用されている範囲や用語の歴史から見ても「スプリッター迷彩」という名称はキャラクターモデルに多く見られる和製独語であり技法である、というまとめになります。

見た感じガンプラ界隈では割と浸透しており、特有の固有名詞であるとしてもいいのかな、と思います。

あまり深く追求すると、いちいち「ピザじゃないよピッツァだよ」と指摘してくるおじさんみたいにウザがられるので程々にしておきましょう。